
夕立
空が暗くなったと思ったら、急に降り始める大粒の雨。
日に焼けた屋根や草木やアスファルトを叩く夕立が、夏の匂いを運んできます。激しく降る雨と雷鳴で、にわかに騒々しくなる夏の日の夕方。まるで夕立にせき立てられるように、家路を急ぐ子どもたち。雨宿りの時間が、長く長く感じられたものです。雷さまからおヘソを守ろうと、おなかを押さえる子がいたものです。ひとしきり降ったあと、吹き抜ける涼風は、夕立の置きみやげ。大人たちはひと雨降った後の涼しさを喜び、田畑が潤ったことをありがたく思うのでした。さて近ごろ、夕立らしい夕立がありません。雨を天の恵みと思わない人間たちに、雷さまがヘソを曲げているのでしょうか…。
浴衣(ゆかた)
夏になると、女性の心を惹き付ける「浴衣」。
縁日や花火大会などの夏の夜を彩るあでやかな浴衣は、老いも若きも、スタイルの善し悪しも関係なく、日本女性を美しく見せてくれます。最近では、デザイナーズブランドのオシャレな浴衣が、若い世代に人気です。カラーリングした髪に似合う派手やかな色使いの浴衣にサンダル、という姿も一般的になりました。このようなワンピース感覚のモダンでカラフルな浴衣と対極にあるのが、江戸の情緒を醸し出す伝統的な白地に藍の浴衣。白と藍だけの潔さが、すっきりと美しく、色の洪水の中でひときわ目立ちます。また、シンプルであるがゆえ帯の選択肢も広く、着こなしやすい点も魅力のひとつです。
ラジオ体操
ねむい目をこすりつつ、スタンプカードをもって出掛ける、ラジオ体操。
夏休みの朝は、空気も澄んですがすがしく、気持ちの良いものです。イバラの生け垣に何かのサナギを見つけたり、ツユクサを摘んで爪を染めてみたり、ふだん通らない道でする道草が楽しくて、みんなが集まる会場へ着くころには、すっかり目が覚めてしまいます。みんな揃って、手を、足を、大きく伸ばし体操すると、体のすみずみにまで力がみなぎって、朝の空気を深呼吸するたび、体が活き活きしてくるのが分かります。家へ帰る頃には、元気いっぱい。家まで駆け出す子もいます。ラジオ体操の後は、いつもより朝ごはんが美味しくて、ついつい、たくさん食べてしまいます。
盆踊り
亡くなった人の御霊を、お迎えし、なぐさめる踊りだからでしょうか。
盆踊りの音頭は、どこかもの哀しく、さびしげな節回しで、心に響きます。輪を作って踊るものと、列になって踊るものの二通りがありますが、岐阜の郡上八幡で踊られる「郡上踊り」に代表されるように、整然と美しく、静かなエネルギーに満ちています。淡々と、黙々と、踊りすすむ郡上踊りを見ていると、踊っているのは人なのか、精霊たちなのか、判別できなくなってくる瞬間があります。踊り手の胸には、失った身近なひとへの思いが込み上げてきて、その懐かしい面影と踊っているのかもしれません。それを見ている人も、懐かしい人の面影と盆踊りを踊っているのかもしれません。